月経不順と漢方

月経不順と漢方の一例

この患者さんは月経不順に悩まされている、学生さんでした。

月経周期は1週間で来たと思ったら、2ヶ月も空いたり。

経期も3日で終わったり、

血塊が出たと思えば、ドロドロと濃い経血から、不正出血があったり、サラサラとした経血に変わってからもダラダラと続いたりと不安定な状況が数年間に渡り続いている状況でした。

他の情報として、経期は食欲旺盛で普段から冷たい物を好み、便はコロコロで便秘気味と言う事で、

問診情報のみ見ていると、パワーが有り余っている形や湿熱タイプなどの連想をしていました。

しかし実際に見てみると、小柄痩せ型で顔色は青白く、声のトーンの低く想像と正反対の方でした。

舌の状況も淡白色で血の気の見えない色合いで、舌の縁はややしぼんで、気と血がある程度不足している事を表していました。

漢方の世界では舌の奥は腎(西洋医学的な腎臓ではない。東洋医学的な腎。)の領域を表し、そこに小さな裂紋を生じていました。

また舌先の瘀点の色合いと出かたは冷えにより血の巡りが悪くなり、血の巡りが非常に悪い事を表していました。

ここまでの段階で婦宝当帰膠や当帰芍薬散に温経湯などなど、温めて、補いながらいかに血を動かすかと言う方剤と止血剤の中から選定と組み合わせの比率など考えていました。

そしてここまでの状況であれば、訴えて来そうな、月経前のイライラ・胸の張りや・月経痛などは一切ないとの事でしたので、柴胡・香附子などの気を巡らせる生薬が方剤の中のメインでなく補佐的な形でなどなど考えたりしておりました。

しかしこれまでの流れと矛盾が舌にありました。

舌先の茸状乳頭の充血がやや色味が強く突出度合いも強い物が、舌先の瘀点の中に混在していました。

そして舌の体は淡く白く血気の少なさを物語っていますが、ところが舌裏の赤みが外縁を覆っていました。

舌裏静脈の怒張の色合いは薄く、怒張の張り出しも弱いながらも、その周りの毛細血管の曝露の赤みに強さを感じました。

この2つの矛盾で今まで連想して駆け巡っていた処方名が180度変わって連想しはじめました。

そして食事状況を聞くと時間帯も不規則で内容にも色々と問題が聞き取れました。

この患者さの月経不順に至るまでの物語を繋げて行きました。

この患者さんは、元々は舌の色の淡白が表す、身体のエネルギーが少なく、身体をめぐる血と気が少ない人であったと。

気が巡らないので冷えてきて、血の巡りは更に悪くなり、血の塊を作り、これが生理血塊を生じ、舌先の瘀点の強さを表していると。

これまでの流れなら食欲不振な感じを連想します。食事量が少なければ消化に力を使わなくても良いので、この方の習慣としてはマッチしている様に見えます。

しかしここからが矛盾でこの方は食欲旺盛で、しかも不摂生が多く、元々のエネルギー不足で消化力も弱いので、

食べた物を良い物を再吸収したり、解毒したり、

要らない物を大便と小便と汗から排出する力も弱く、

良い物も再吸収できずに、悪い物も排出しきれずに、ドンドン腸管内に溜まってしまいます。

この溜まった物が、
腸管からリンパ管を経て静脈へ行く流れや、

小腸から門脈を経て、肝臓への流れなどを悪くします。元々冷えて流れの悪くなった血を更に悪くして行く負の連鎖を、生活習慣に取り入れてしまっているのです。

また元々は消化力エネルギーの弱い人でも、これらの腸管に溜まった物が熱を生むと、その熱で食欲旺盛になったりします。

この悪循環の連鎖により生理不順がドンドンと悪化して来ていると考えました。

そして小腸に溜まった悪い物を取る生薬数種類をメインに消化管の消化力を立て直す生薬と、

温める生薬と冷やす生薬の比率を考えながら。

組み合わせて行き元々のエネルギー不足があるので、やや補う物を少し足しました。

ここでポイントは小腸に溜まった物体が、小腸上部か小腸下部でより大腸に近いのか、

ドロドロとしているのか、固まっているのか、

深い所まで侵食しているのか、

冷えている、熱を生じている、

などによって生薬の種類や組み合わせ方が変わって来ます。

(檳榔子で取れるのか、滑石いやいや芒硝がいるのか、山査子に莪朮まで必要になるか、など考えは多岐に広がります。)

その違いを舌や問診などを重ねて参考にします。

例えば舌の苔の生え方、生えている部分、形状、乾いてるのか、潤っているのか、固まっているのか、ぬめっているのか、色、それぞれの特徴、などなど書き切れない情報の中での違いを徹底的に観察して見逃しません。

組み上げた物を2週間お渡しして様子を見ました。

まだ月経は遅れていると言う事でしたが、便の量が増えたと言う事だけで特に変化は感じられないと言う事でした。

体感的にあまり変化がないと言う事で、方剤の変更も連想していましたが、

舌を見ると、茸状乳頭の充血の赤みと舌裏の毛細血管の赤みが少しだけですが取れた状況が見られたので、

これわ方向性は間違いないと確信しました。

寒熱のバランスを舌から分析して、温めながら血を動かす生薬を少量足して経過を見ました。

生薬を足したり、減らしたり、その時の舌の状況や問診情報から3か月継続して、

舌の茸状乳頭と舌裏の赤みは完全に引きました。舌の淡白色もやや血気が巡った色ありを見せ始めました。

とともに月経周期も整いはじめた気がするとの事でしたが、血がダラダラ続く形は続くと言う事と食事の不摂生も是正し舌の赤みもないので。

この段階で当初に考えていた、温めながら補いながら血を動かす方剤を組み合わせて、田七・蒲黄と言った血を止める生薬も混ぜ込みました。

漢方継続6か月目になりますが、月経周期は3~4週間間隔のずれはあるものの、定期的に来るようになりました。また血塊は減ったが、まだ出る事はたまにはあるが、血がダラダラと続くのは無くなったと言う事でした。

薬剤師 渡邉太郎

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