今回は患者さんの中にも多く、
私も時折悩まされることのある「便秘」に関するお話しです。
便秘になるメカニズムとは?
便秘は東洋医学では“胃気(いき)”の滞りによるものと考えます。これは、胃腸を動かすしくみのことで、
“胃気”の働きが滞ると腸の動きも止まってしまい、便秘になるとされるのです。
“胃気”が正常に働くためには、まず体全体の“気”がスムーズにめぐっていなければなりません。
“胃気”は本来、上から下に向かって流れることで正常に保たれていますが、“気”のめぐりが悪いと(気滞:きたい)、
下向きの流れが弱くなったり、逆流したりするのです。
とくに気滞が原因となり、陰虚(いんきょ)や瘀血(おけつ)をともなっている人は、便の質も悪く、
便秘になりやすいというわけです。
便秘のタイプ別養生の仕方
“水”が不足していて、体全体に潤いがなくなっているのが、陰虚の人。
乾燥による症状は皮膚だけではなく、さまざまな場所に表れますが、それが胃や腸に表れると便が乾燥して
かたくなってしまいます。
陰虚の人は寝不足や過労で“気”を巡らせる底力が低下していることも多く、胃腸の動きが悪くなりがちです。
すると、乾燥した便が一層排出されにくくなるということになります。
このタイプの人が腸を潤そうと水分を過剰にとっても、胃腸を冷やすだけでさらに動きを悪くしてしまいます。
養生としては、十分な昼間の活動によって得られる夜の睡眠を充実させること。しっかりと休養をとること。
睡眠不足や過労は、“水”の消耗を招く要因です。
“血”の流れが停滞しているのが、瘀血の人。
腸の中の“血”の流れが良くない状態では、便をうまく排出することができません。
また、“血”は熱を運ぶ役割があるので、この流れが滞ってしまうと冷えが生じ、胃腸を動かす“胃気”の働きを
低下させることにつながります。
さらに“血”は、それ自身に流れる力はなく、“気”が先導することによって、初めて全身に運ばれるもの。
このため“気滞”の人は同時に“瘀血”になっていることが多いようです。
養生としては、体を冷やさないことが大切です。“気”の循環をスムーズにすることもポイントになるので、
イライラしすぎず楽しい時間を持つことが一番です。
養生しても改善が見られない場合、ご体質に応じた漢方薬をご案内することもできますので、お気軽にご相談ください。
薬剤師 近藤 尚美