”虚実”とは漢方医学の中で人を見るうえでとても根本的でありであるからこそのとても重要な考え方である。
しかしそんな根本的な部分ながらも人によっては捉え方が大きく違う項目でもあるので、いろんな角度から説明してみようと思う。
現代のいわゆる病名漢方にあたる、処方箋適応の漢方の項目にはよく
「体力があって」 「体力が中程度以上」 「体力がなくて」
などのように体力を基準とした記述がみられる。
・・・体力?
たぶん虚実のことを言っているんだろうと思うが、臨床的に見れば「なんのこっちゃ?」である。
実際に体力のある方用のお薬を体力のない人に出して症状が改善することは多々ある。
”体力のある”という定義も良く分からない。
病気を患っているのだから、キッカケとしては虚が隠れていることが多いのはもちろんだが、
体力モリモリ、元気いっぱいの人が病院や薬局に来るのだろうか?
体力の多寡での虚実はさておき
この虚実に関して個人的に思う西洋医学にも通ずる考えを書こうと思う。
「活性酸素」や「抗酸化物質」という言葉をよく見かけたり聞いたりしないだろうか?
活性酸素が何であるかというのは
少し難しく言えば身体のあちこちを酸化させてしまう物質であり
簡単に言えば身体にダメージを与えたり老化させてしまう物質です。
物でいえばバナナが茶色くなったり物が腐っていくのも酸化作用によるものです。
それを取り除いてくれるものが今流行の抗酸化物質。ビタミンCやビタミンEなどで有名です。
特にビタミンCは「シミを薄くしてくれる」や「風邪を引きにくい体質にする」で有名ですが、これが抗酸化作用の代表例です。
その活性酸素が多い状態が「実」であり
また活性酸素が少ない状態が「虚」なのではないでしょうか?
あれ?少なければ老化せず、病気にもなりにくいんじゃないかな?
じゃあ「虚」の状態は良いんじゃない?
と思いましたか?
この活性酸素というのはもちろんストレス社会や運動不足や飽食の現代社会では
悪者として扱われることが多いですが
身体にはなくてはならないものでもあるのです。
この活性酸素は悪役ばかりのイメージを作られていますが、
身体に入ってきた細菌類などの悪者もやっつけてくれます。
この機能が低下している状態がいわゆる免疫低下の状態で
「虚」の人に多いです。
つまりこの活性酸素の減少、つまり正常なミトコンドリア活性や
マクロファージの活動などが減少しているというところもありますが
その根本として、脾胃が元々弱く消化吸収能力が低下していて食が細かったり
する人はそういう状態になりやすいのです。
それで”虚実”が”活性酸素の多寡”に関わるからどうなのか?
というところが今回のポイント。
それは星の数ほどある現代の生薬とも考えられる健康食品の数々や
昔から伝わる漢方の生薬、考えを統一し
身体を分解しどこがどう活性酸素が関わっており、それを調節できればいいかが
何千年という歴史の中の治療例になぞらえてコントロールできると
どんなことにでも通用しうるということです。
今の健康食品が漢方の虚実を治しうるということでもあり
昔の漢方も今の抗酸化物質として病気を治せるということ。
ただしどちらにも言えることですが
東洋医学のこれらの考えは西洋医学のように型にはめた
「活性酸素が原因にはコレ!」ではなく
その人には活性酸素がどのようにして生まれ、またどこに作用しその影響がここまで出て、最終的にどういった症状を引き起こしているのか?
という生態的な流れを理解し、そのどこにアプローチをかけることが最適なのか?
人は動的なので、万人に水素水だけでいい、ビタミンCだけでいい
なんてことはありえない。
合う人には合うとは思うが、(その商品がしっかりしたものという前提もあり)
その答えはそう簡単ではないということ。
しかしそれを簡単にしたものが
中国何千年の歴史での賜物であり
それは人間を読み解くのではなく自然の流れの中でどうあるべきなのかに視点を置いて
その人の以上にどう合わせていくのかということ。
自然の中での治療が一番という点においては
一つの成分に突出した抗酸化物質だけで治すというのは誰にでも当てはまらないのかもしれない。
※この考えは櫻井独自の仮説であり漢方界での考えではありませんのでご了承ください
薬剤師 櫻井 大輔