気象庁は連日、「高温注意情報」を発表し、熱中症を防ぐよう呼び掛けています。
熱中症は東洋医学では中暑(ちゅうしょ)と言います。
中とはダメージを与えるという意味で、食中毒の「中」と同じで、暑さに中(あた)った疾患ということです。
熱中症は体内に溜まった熱が放散できずに、体温の調整ができなくなった状態で、
症状としては、めまい、立ちくらみ、筋肉痛、こむら返り、頭痛や吐き気、倦怠感などがあります。
重度になると、意識障害、言語障害、けいれん、手足の運動障害(まっすぐ走れない・歩けない)、高体温(からだに触ると熱い)などが起こり、死に至る可能性もある疾患ですので、決して甘くみてはいけません。
ところで、「暑さ指数(WBGT :Wet Bulb Globe Temperature)」ってご存知でしょうか?
「暑さ指数」とは、熱中症を予防することを目的とした指標で、単位は気温と同じ℃で示されますが、その値は気温とは異なります。
人間の熱バランスに影響の大きい
①湿度
②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境
③気温
の3つを取り入れた指標で、熱中症の危険度を判断する数値として、環境省で情報提供しています。
(図:環境省のHPより)
上の図から、同じ気温でも湿度が高いほど暑さ指数の数値は増加することが分かります。
湿度が高い(空気中の水分量が多い)と汗が蒸発しにくく、身体から熱を発散しにくくなるため、より熱中症のリスクが高まるのです。そのため、高温多湿な日本の夏は、カラッとした湿度の低い南国よりも熱中症を起こしやすいのです。
暑さ指数は労働環境や運動環境の指針としても利用されています。
全国各地の暑さ指数は環境省の
熱中症予防情報サイトで確認することができますので、猛暑日が続くこの時期、「高温注意情報」や「暑さ指数」の情報を活用し、十分な対策をとりましょう。
最後に、熱中症対策に漢方処方「生脈散(しょうみゃくさん)」をご案内します。
〇生脈散の処方内容
人参、麦門冬、五味子
〇生脈散の効能・益気生津(えききしょうしん)
益気=気を補う。または気を生み出す働きを高める。
生津=津液(しんえき)を生む。
津液とは体内に必要な液体成分。無駄な水分は「湿(しつ)」と呼びます。
・止汗生脈(しかんしょうみゃく)
止汗=汗を止める。
汗を止めることで、体内に必要な液体成分「津液」の消耗を防ぎます。
生脈=脈を生む
津液の消耗を防ぐことで体内に必要なだけの津液が留まり、 気を増やすことで津液の循環、つまり「脈」を生む事ができます。
生脈散は体内に必要な成分「気」「血」「水(津液)」のうち、「気」と「水(津液)」を増やす処方であり、さらに止汗作用により「気」と「水(津液)」の消耗を防ぐ事が期待できます。運動をするときや汗をたくさんかく時には水やスポーツドリンクなどに溶かして服用しておくと、夏バテや熱中症の予防になります。
薬剤師 近藤尚美