※2016年に公開した記事です
日本人選手のメダルラッシュが続いています! リオオリンピックから目が離せない毎日です。
筋肉を酷使するアスリート。 毎日入念にケアしていても足がつるというアクシデントが起こることも・・・。
筋肉が正常に機能するためには、血による滋養作用が充分にあることが必要です。ところが、夏場のスポーツの後など発汗過多の状態は血の滋養作用を低下させることになるのです。
汗が多く、夏の疲れが出始めるこの時期はコムラガエリを起こしやすい時期といえます。
中医学では、筋肉や手足の運動面には「肝」が関係していると考えます。
筋と肌肉が収縮・弛緩することにより肢体・関節の屈伸や転足は自由自在に行えます。そして、この機能は肝血の濡潤によって維持されるのです。肝血が不足して筋を濡養できないと、筋肉のひきつり(痙攣)、しびれ、運動障害などが現れます。
汗=津液=陰液=血と考えるので、汗の損失は血分の不足(肝血不足)を起こしていることになります。
汗と同じ成分を含むといわれている飲料水を十分に摂取することは意義深いのですが、それがキンキンに冷えている場合には話は別なのです。急激に冷たいものを摂取し、さらにそれを重ねることでどんどん湿邪が停滞するのです。
そのために気・血・津液の正常な流れが阻害され、結果、血の滋養作用が不十分になり、いっそうコムラガエリを起こしやすくなるのです。
ゆっくり少しずつ冷やし過ぎていないものを“噛むように飲む”というのが大切です。
足がつる場合、筋肉の痙攣を抑えるのに【芍薬甘草湯】という処方があります。
芍薬と甘草の二味で構成されています。
芍薬は肝血を補い肝陰を収斂し、柔肝・平肝・緩急止痛にはたらきます。
甘草は炙ったものを用いれば三焦の気を補い表寒を散じます。益脾生津し緩急止痛・止痙にはたらきます。
両薬は合わせることで滋陰平肝・緩急止痛・止痙の効果が強まります。筋肉の痙攣は肝血虚です。したがって、本方は平肝鎮痙の作用を持ち、肝不養筋のけいれんに有効です。
胃痙攣や種々の結石による痙攣性の痛みなどにもよく用いられます。
この【芍薬甘草湯】をベースにして、筋肉の働きを阻害している湿邪を取り除き、血の働きを助けるものを。
また、筋肉へ栄養分を供給している血を補い、血脈を通すことを考え組み合わせて対応します。
妊娠の後期になると、ふくらはぎや足の甲が引きつって痛むといった症状に悩まれる方がいます。
胎児を養うために、筋肉に対する血の濡養が不足する血虚が考えられます。夜間や睡眠時に発生しやすいというのも特徴です。同じく、養血するものを組み合わせます。
また、冷えると痛みが増強し、温めると軽減する場合。これは陽虚になりがちであったところに寒邪が侵入し経絡が阻まれ、下肢の血脈の運行が凝滞するために発症するのです。この場合は温経散寒するものを組み合わせます。
こういった薬による方法もありますが、日常の節制により予防できる事も多くあります。
冷たい飲料や食品の摂りすぎ、エアコンによる冷えに気を付けましょう。ストレスをため込まないようにしましょう。
シャワーで済ませるばかりではなく、温め(ぬるめ)のお風呂にゆっくりとつかりリラックスするのも良いと思います。ただし、入浴後の冷たい飲物には注意してくださいね。
薬剤師 林あかね